
ホームページにも出てくるこの言葉は、かつて利用者さんのAさんからかけて貰った忘れられない言葉です。その方は進行性の難病で、訪問看護を導入する少し前から徐々に身体機能が低下し始めていました。食事は携帯食をご家族やヘルパーさんが用意してくれて、前傾姿勢のままなんとかフォークで食べていましたが、ある日「ビールはストローだと飲みたくないし、酒は人に飲ませて貰っても美味しくないんだよね。」と悲しそうな笑顔で言いました。そこで職員で知恵を絞り太い針金を駆使して、Aさんが顔を動かす力を使ってビールを飲めるような器具を作成しました。またあるときは、一人になる時間があるため、寝返りがうまくいかない時に背中に熱がこもることが辛いと言うので、色々な方法やマットの素材を試し続けてようやく苦痛を軽減するマットに辿り着きました。住宅事情や経済的事情で訪問入浴の導入が難しい時も、できるだけ家のお風呂に入れるように道具を工夫して可能な限り入浴しました。動けなくなっても可能な限り希望を実現できるように努めて関わっていました。そしてある日この言葉を私達にかけてくれたのです。進行していくその病気は、時が来たら人工呼吸器を装着するか否かという決断を迫ってきます。Aさんは装着しないと決めていましたが、不安と恐怖と悲しみの中で病気の進行を感じていたと思います。訪問看護師として何が出来るだろうかと日々関わるなかで、この言葉をかけて貰った時のことは本当に忘れられません。私達があきらめてしまったら
それまでです。少しでも何とかしよう、色々な人の力を借りてみよう、やってみてだめならまた改善しよう、ないものなら作ってみよう・・・訪問看護師としてたくさん成長させてくれた利用者さんでした。