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訪問看護ステーションととのえ

「俺のことをあきらめないでいてくれてありがとう」(2)




Aさんは進行性難病のため、徐々に時には急激に状態が悪化していきました。入院になったためAさんの様子を見に行くと、「今までもよく奥さんに手紙を書いていたけど、書けなくなったから代わりに書いてほしい」と言われました。代筆していくと「(娘さんに)ママは一人では出来ないこともあるから、これからママのことを頼むね。ママは○○も△△もできないよ。(奥さんに)今までたくさん苦労かけてごめんね。大好きな曲を葬儀のときに流して欲しい。」・・・聴いていくうちにまるでAさんの最期の手紙を書いているような気持ちになりました。とても悲しくなりましたが涙を堪えて代筆を続けました。きっとAさんは自分に最期の時が迫っていることを感じていたのだと思います。それから1週間ほどで呼吸が弱くなり、そしてその手紙は本当に最期の手紙になってしまいました。仕事を終え急いでAさんの葬儀に向かうと、葬儀が終わる頃にちょうどその曲が流れてきました。その曲を聴きながら、Aさんの思いが叶えられて、最期の言葉を手紙にしておくことができて本当によかったと感じました。「最期の声を聴いておいてくれてありがとう」と師長に言われましたが、その言葉はなんだかAさんに言って貰ったような気持ちになりました。Aさんは病気になってからもずっと、自分の人生を生きる事を諦めていませんでした。その姿をいつも見せてくれたAさんに、こちらこそ「ありがとう」と伝えたいです。

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